出会いの障害学 ―多様な生を旅する
~Discover Another World~
田中恵美子
「障害」は社会の側にある。
希望をつむぐ「障害学」入門。
すべては出会いからはじまった。“ふつうの会社員”であった著者は、障害のある人との出会いによって、障害学の研究者への道を歩むことになる。
その研究手法は、人との出会いと取材に貫かれている。
ALS患者嘱託殺人事件をめぐって、人工呼吸器ユーザーの葛藤を聞く。
まただれも助けることができずに、水害で逃げ遅れてなくなった知的障害をもつ母と、その幼い子のこと。
著者は、当事者を取材し、ときに涙しながら、そこにある困難や人の生き様を綿密に描いていく。そこから日本の介護制度の問題点、進んでいないインクルーシブ防災、社会がつくる「障害」の現在が見えてくる。
「障害」とは個に属するのでなく、社会の側に属するという障害学の考え方が、実例とともに理解されるだろう。
「私は障害のある人たちに社会を見る眼鏡を与えてもらった。そのレンズを通して見ると、私の周りにあって、もやもやとしてよくわからなかった問題が、はっきりと見えてきた。」(本文より)
すべての生きづらさを抱える人へ。